建設工事では、発注者や監督員が実際に現場に来て施工状況を確認する「立会い」が、長年の慣行として定着していました。
遠隔臨場とは、この「現場に来なければ確認できない」という前提をビデオ通話・カメラ映像で変える仕組みです。特に公共工事の発注機関(国・自治体)が制度的に認めることで普及が加速していて、施工管理DXの中でも政策との連動が特に強い領域です。
それでは詳しく見ていきましょう。
- 遠隔臨場とは何か、なぜ「立会い」が必要だったのか
- なぜ公共工事から普及するのか(発注者の制度認可が条件になる構造)
- 遠隔臨場が使われる場面と2024年の適用拡大
- 需要が出る企業層と投資家が見るべき論点
遠隔臨場とは何か、なぜ立会いが必要だったのか
建設工事には、工事の節目で発注者・監督員が現場に来て施工状況を確認する「臨場」という慣行があります。
コンクリートを打設する前の鉄筋配置の確認、材料が仕様通りかの確認、完成前の検査——これらは目視・触診・計測で現地確認することが品質担保の基本とされてきました。
この「臨場」が必要なたびに、発注者側の監督員は現場まで移動しなければなりませんでした。現場が遠方の場合、1回の確認のために半日〜1日を費やすこともあります。工事が増えるほど、監督員の移動負担は積み上がります。
遠隔臨場は、スマートフォン・タブレット・ウェアラブルカメラ(スマートグラス等)の映像をビデオ通話で共有することで、発注者側が現場に来ずに「臨場した」と同等の確認ができる状態を作ります。
監督員の移動が不要になり、施工会社側も「発注者が来るまで待機する」時間が削減されます。
なぜ公共工事から普及するのか
遠隔臨場の普及には、他のDXツールと異なる特有の条件があります。それは、発注者が「遠隔でOK」と制度的に認めなければ使えない、という点です。
施工管理アプリや電子小黒板であれば、建設会社が社内で導入を決めれば使い始められます。しかし遠隔臨場は、「発注者の立会い確認」を代替するものです。発注者が「遠隔での確認は認めない」という立場を取れば、どれだけ技術が整っていても使えません。
公共工事では国土交通省が発注者として先頭に立って制度整備を進めています。国交省の直轄工事で「遠隔臨場OK」のルールが整備されると、都道府県・市町村の工事にも波及し、最終的に民間工事にも普及していく流れです。
国が制度として認めることで市場が開く構造は、i-Constructionの他の施策とも共通する建設DXの普及パターンです。
施工管理の省人化はなぜ急がれているのか|手法・i-Construction 2.0・投資テーマ遠隔臨場が使われる場面と2024年の適用拡大
遠隔臨場が適用される主な場面は以下の4つです。
| 場面 | 内容 | 普及状況 |
|---|---|---|
| 段階確認 | 施工途中の節目で状態を確認する | 国交省直轄工事で普及 |
| 材料確認 | 使用材料の品質・規格を確認する | 国交省直轄工事で普及 |
| 立会い確認 | 施工の重要な場面に発注者が立ち会う | 国交省直轄工事で普及 |
| 検査 | 完成・中間段階での正式な検査 | 2024年以降、国交省が適用拡大を推進(出所:国土交通省) |
特に重要なのが「検査」への拡大です。従来、正式な検査は現地で行うものとされていました。国土交通省の「令和6年版国土交通白書」および「i-Construction 2.0」では、遠隔臨場の適用を立会い確認から検査にも広げる方針が明示されています(出所:国土交通省)。
検査まで遠隔対応できれば、監督員・技術者双方の現場拘束が大幅に削減されます。
施工管理DXは建設業の何を変えているのか|DXと省人化の違い・建設SaaSの事業構造i-Construction 2.0 が遠隔臨場を推進する仕組み
2024年4月に国交省が策定した「i-Construction 2.0」では、遠隔臨場は「施工のオートメーション化」と並ぶ重点施策として位置づけられています。
また、同じく2024年12月の建設業法改正では、ICTを活用して工事現場の状況確認ができる場合に技術者の兼務が認められました。
遠隔臨場ツールはこの「ICT活用」の具体的な手段の一つです。遠隔臨場の導入が進むほど、技術者の兼務要件を満たしやすくなる関係にあります。
遠隔臨場がi-Construction 2.0 の「施工管理のオートメーション化」に位置づけられる流れは、国土交通省の資料(下図)で確認できます。
需要が出る企業層と投資家が見るべき論点
遠隔臨場ツール・ウェアラブルカメラ提供企業
遠隔臨場に使われるシステムは、スマートフォン・タブレット向けのビデオ通話アプリから、ハンズフリーで映像送信できるスマートグラス・ウェアラブルカメラまで幅広くあります。
建設現場向けに特化した遠隔臨場システムを提供する企業の需要は、公共工事での制度普及とともに拡大する構造です。国交省の直轄工事でルールが整備されると、自治体・民間へ波及する流れが読みやすいため、政策動向をウォッチすることで需要拡大のタイミングを先読みしやすいカテゴリです。
施工管理DXプラットフォームへの統合
遠隔臨場機能は単独で使われることもありますが、施工管理アプリのプラットフォームに統合される形での展開も進んでいます。写真管理・日報・工程表と連携して遠隔確認できるオールインワン型の施工管理プラットフォームの付加価値が高まっています。遠隔臨場機能をプラットフォームに組み込むと、ユーザーが別の専用ツールを使う必要がなくなるため、そのプラットフォーム上にユーザーを留める力が強まります。
ゼネコン・サブコンへの影響
遠隔臨場が普及すると、技術者が現場に「発注者の確認のために待機する」時間が削減されます。この削減時間が、技術者の管理可能現場数の増加に直接つながります。
遠隔臨場は単独の省人化ツールというよりも、施工管理アプリ・技術者兼務・BIM/CIMと組み合わせることで効果が最大化する、施工管理DX全体のピースの一つとして捉えると、業界の変化を読みやすくなります。
まとめ
- 遠隔臨場とは、ビデオ通話・カメラ映像を使って発注者が現場に出向かずに立会い確認を行う仕組みで、施工管理DXの中でも政策との連動が強い領域。
- 普及には発注者(国・自治体)が「遠隔でOK」と制度的に認めることが前提条件で、国交省直轄工事での整備が民間への波及を先導する構造になっている。
- 適用場面は段階確認・材料確認・立会い確認から始まり、2024年以降は「検査」への拡大が国交省のi-Construction 2.0で推進されている。
- 2024年12月の法改正でICT活用による技術者兼務が認められていて、遠隔臨場はその具体的な手段の一つとして位置づけられている。
- 需要が出る企業層は遠隔臨場ツール・ウェアラブルカメラ提供企業と施工管理DXプラットフォーム。ゼネコン側では技術者の管理可能現場数の増加として効果が現れる。