けんちくま
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建設コンサルタントって、ゼネコンと同じ建設業の会社でしょ?インフレの影響も同じように受けるんじゃないの?

建設コンサルタントとゼネコンは、同じ「建設業」という括りで見られがちです。でも、ビジネスの中身はまったく違います。インフレへの耐性も、景気変動との連動も、決算で見るべき指標も、全部違います。

この違いを知らないと、建設関連株を一括りにして同じように見てしまいます。

それでは詳しく見ていきましょう。

この記事でわかること
  • 建設コンサルタントとゼネコンで何をする会社かがどう違うか
  • 設計・施工分離の原則とは何か、なぜ重要か
  • ビジネスモデルの違いがインフレ耐性の差を生む理由
  • 決算でゼネコンと何が違う指標を見るべきか

建設コンサルタントは「設計」、ゼネコンは「施工」

最も根本的な違いは、工事を実際にやるかどうかです。

ゼネコンは工事の元請けとして、実際に現場で工事を進めます。資材を調達し、職人を手配し、建物や道路を完成させる。完成して発注者に引き渡して初めて売上が立ちます。

建設コンサルタントは工事をしません。発注者(国や自治体)の代わりに、工事が始まる前の調査・計画・設計と、工事中の監理業務を担います。設計図を作り、どこにどんな橋を架けるかを決め、工事が設計通りに進んでいるかを確認する。これが仕事です。

 建設コンサルタントゼネコン
何をするか調査・計画・設計・監理施工(実際の工事)
主な発注元国・地方自治体(公共中心)国・自治体・民間企業・個人
売上が立つタイミング役務(サービス)の提供に応じて工事完成・引き渡し後
主なコスト人件費(技術者の給与)材料費・外注費・人件費
インフレの影響限定的(資材を使わない)大きい(タイムラグで後から直撃)

「設計・施工分離の原則」が業界構造をつくっている

なぜ設計する会社と施工する会社が分かれているのか。これは偶然ではなく、制度的な原則があります。

1959年に国土交通省の前身が定めた「設計・施工分離の原則」により、公共工事では設計と施工を同じ会社が担うことは原則禁止されています。設計した会社がそのまま工事も受注すると、自分に都合のいい設計をするインセンティブが生まれるからです。

設計は建設コンサルタントが担い、その設計に基づいてゼネコンが工事を受注する。これが公共インフラ工事の基本的な流れです。だから建設コンサルタントとゼネコンは競合関係ではなく、役割が分かれた異なる業種です。

建設業の受注は公共と民間でなぜ動き方が違うのか

インフレへの耐性がゼネコンとまったく違う理由

ゼネコンがインフレで採算を直撃される理由は、受注した価格が固定される一方、工事中に資材費・労務費が上がるタイムラグ構造にあります。

建設コンサルタントにはこの構造がありません。理由は2つあります。

  • 資材を使わない:設計・調査・監理は頭脳労働です。鉄筋もコンクリートも使いません。資材価格の高騰はコストに直接影響しない。
  • 完成まで待たなくていい:役務(サービス)の提供に応じて売上を計上できます。3年かかる設計業務なら、年ごとに進捗に応じて売上が立ちます。ゼネコンのように完成・引き渡しまで待つ必要がない。

だからインフレが急騰してもビジネスへの直撃は限定的です。コストの大半は技術者の人件費なので、賃上げが続けばコストは増えますが、それはゼネコンも同じ条件です。

インフレはなぜゼネコンの採算を直撃するのか|受注から完成までのタイムラグ構造

公共工事中心という特性が業績を安定させる

建設コンサルタントの仕事は公共工事の設計・調査が大半です。道路・橋梁・河川・ダム・港湾・上下水道など、国や自治体が発注するインフラ整備が主な領域です。

公共工事の発注量は国の予算と政策で決まります。景気に連動しにくく、インフラ老朽化対策や国土強靭化のような国策が続く限り、仕事量は安定します。

ただし、裏を返せば民間需要の恩恵を受けにくいという面もあります。民間の建設ラッシュ(大型再開発・データセンター建設ラッシュ等)があっても、建設コンサルタントの売上には直接反映されにくい。公共予算が増えれば業績は伸び、削られれば落ちる。この構造を知っておく必要があります。

決算でゼネコンと何が違う指標を見るか

技術者1人あたりの売上高

建設コンサルタントの収益力は、技術者の生産性で決まります。有価証券報告書の「従業員数」と売上高を組み合わせて、1人あたりの売上高が伸びているかどうかを確認します。DXや業務効率化が進んでいる会社ほど、この数字が改善します。

受注残の規模と質

設計・調査業務の受注残は、向こう数年の業績の先行指標です。大型インフラ案件を複数年にわたって受注していれば、安定した売上が続きます。受注残が増えているか、大型案件が含まれているかを確認します。

完工利益率ではなく売上総利益率

ゼネコンでは「完工利益率(完成工事総利益率)」が採算の主要指標です。建設コンサルタントでは、完成工事という概念がなく、売上総利益率(粗利率)で見ます。技術者の人件費をどれだけ効率よく売上に変えているかが、この数字に出ます。

注意点
建設コンサルタントのなかにも、施工管理やEPC(設計・調達・建設の一括請負)まで手がける会社があります。その場合はゼネコンに近いリスク構造を持つ部分があります。また、公共工事中心ゆえに、行政の発注方式変更(入札競争の激化・価格下落)の影響を受けやすい面もあります。「建設コンサルタントだからインフレに強い」と単純に言い切れない会社も存在します。事業内容を確認することが重要です。

まとめ

  • 建設コンサルタントは調査・計画・設計・監理が仕事で、工事はしない。ゼネコンとは役割が分かれた別業種。
  • 設計・施工分離の原則により、公共工事では設計と施工を同じ会社が担うことは原則禁止されている。
  • 資材を使わず完成を待たずに売上計上できるため、ゼネコンが抱えるインフレのタイムラグリスクがない。
  • 公共工事中心で景気変動に強いが、民間建設ラッシュの恩恵は受けにくく、公共予算の動向に連動する。
  • 決算では完工利益率でなく売上総利益率と技術者1人あたり売上高、受注残の規模を確認する。