建設業が人手不足というのは知っていても、どのくらい深刻かはあまり知られていません。数字を見ると、感覚よりずっと深刻で、しかも10〜20年は続く問題です。
それでは詳しく見ていきましょう。
- 建設業の人手不足が数字でどのくらい深刻か
- 対策があるのに解消されない構造的な理由
- 省人化・DX・インフラ維持管理が投資テーマとして注目される背景
まず、数字で確認する
建設業の就業者数は1997年のピーク685万人から、2024年には477万人まで減少しました(出所:総務省「労働力調査」)。約30年で200万人以上が業界からいなくなった計算です。
年齢構成を見ると、問題の深刻さがよりはっきりします。
55歳以上の割合
全産業平均は32%
29歳以下の割合
全産業平均は17%
有効求人倍率
全産業平均は1.24倍
55歳以上が37%ということは、今後10〜15年で大量の退職が確実に起きるということでもあります。一方、29歳以下はわずか12%。求人倍率は全産業平均の約4倍。求人を出しても人が来ない状況が続いています。
就業者数の減少と高齢化の進行は、国土交通省の参考資料(下図)でも一覧できます。
入職者が退職者の半数以下にとどまっている
一言で言うと、退職していく人数に対して、入ってくる人数が追いついていないからです。
入職してもやめていく問題もあります。建設業の高卒新入社員の3年以内離職率は約42.5%で、製造業(27.6%)と比べて15ポイント近く高い水準です(出所:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」)。入ってきた人の約半数が数年でいなくなります。
国交省の推計では、今後10年間の退職者を補う若手入職者は約37.6万人にとどまります。退職者の半数以下しか入ってこない計算で、これが人手不足が自然解消しない根本的な理由です。
対策を打っても解消しない構造がある
政府・業界も手を打っています。2024年4月には建設業への時間外労働上限規制が適用され、週休2日が普及しています。技能者の賃金引き上げも続いていて、外国人材の受け入れも広がっています。
それでも解消しない理由は、対策の効果が出るスピードより、退職者が出るスピードのほうが速いからです。賃上げや週休2日が定着しても、若者の絶対数は急には増えません。10〜20年は続く問題です。
投資テーマとして注目できる領域
人が足りない状況が長期で続くとすれば、業界はどう動くか。大きく3つの方向性で需要が生まれています。
省人化・施工管理DX
1人でできる仕事の範囲を広げるしかありません。施工管理アプリ・電子小黒板・遠隔臨場・ICT建機といった省人化ツールへの需要は、人手不足が続く限り構造的に発生します。建設会社にとっては「導入するかどうか」ではなく「導入しないと受注能力が落ちる」という切実な問題なので、ツール提供側には安定した需要が積み上がりやすいです。
インフラ維持管理
老朽化したインフラの補修・維持管理は件数が増え続けます。人手が少なくなるほど、工事単価は上がりやすい構造です。少ない人員で多くの案件を取り合う状況になると、施工会社が強気の価格設定をしやすくなるからです。
国交省の推計では2030年頃にはインフラ維持管理費だけで年間5兆円規模になるとされています(出所:国土交通省「インフラメンテナンスの将来推計」)。
建設機械・測量DX
ICT建機・ドローン・レーザースキャナーで人が行う作業を代替する動きが加速しています。建設会社が採用難に直面するほど「機械に任せられる工程は任せる」という発想が現場の標準になっていくため、機器・ソフトウェアメーカーにとっては顧客側の導入動機が年々高まる構造です。測量・点検・施工の自動化には、人手不足への直接的な対応として需要が出ます。
有価証券報告書の「事業等のリスク」欄に人手不足・採用難を明示している建設会社が増えています。施工能力の制約をリスクとして認識している会社かどうかは、IR資料を見るうえでの確認材料になります。
まとめ
- 建設業の就業者数は1997年のピーク685万人から2024年には477万人まで減少している。
- 55歳以上が就業者の37%を占め、29歳以下はわずか12%と年齢構成が大きく歪んでいる。
- 若手の入職者数が退職者の半数以下にとどまり、構造的に自然解消しない状態が続いている。
- 週休2日・賃上げ・外国人材受け入れ等の対策も、退職者が出るスピードには追いつかない。
- 省人化DX・インフラ維持管理・建設機械DXの3領域で、長期的に需要が生まれる構造がある。