建設業の高齢化が深刻だという話は広く知られています。ただ、深刻さの中身、特に「10年後に何が起きるか」と「需要との矛盾」を合わせて理解すると、見え方がかなり変わります。
それでは詳しく見ていきましょう。
- 高齢化の具体的な数字と、10年以内に何が起きるか
- 需要(建設投資)が増えているのに人手が減るという矛盾
- 技術・技能継承が失われるリスク
- 投資テーマとして高齢化をどう読むか
まず、数字で確認する
建設業の就業者のうち、60歳以上の技能者は全体の約26%を占めています(出所:国土交通省)。4人に1人以上がすでに60歳を超えているということです。
就業者に占める割合
10年以内に大半が引退見込み
建設投資額(見込み)
前年度比+2.7%
就業者数
1997年比 約−30%
3つの数字を並べると、矛盾が見えます。需要(建設投資)は増えているのに、人手(就業者)は減り続けている。しかも就業者の4人に1人が10年以内に引退する年齢です。
需要は増えているのに、人手が減る
2010年代前半まで、建設投資額と就業者数は両方とも低水準でした。問題は2015年以降です。国土強靭化・復興需要・防衛関連・データセンター建設など、建設投資を押し上げる国策が続く中で、就業者数の減少は止まっていません。
グラフが示すように、建設投資は2010年を底に回復・拡大している一方、就業者数は下がり続けています。需要と供給が逆方向に動いている。
建設投資額と就業者数の長期推移は、国土交通省の参考資料(下図)でも確認できます。
若者の入職不足と高い離職率が高齢化を加速させている
高齢化が進む最大の理由は、若い世代が入ってこないからです。建設業の29歳以下は就業者全体の12%にとどまり(出所:国土交通省)、全産業平均の17%を大きく下回ります。入ってくる若者が少ないまま時間が経てば、就業者全体の年齢は上がり続けます。
さらに入職しても定着しない問題があります。建設業の高卒新入社員の3年以内離職率は約42.5%で、製造業(約27.6%)より15ポイント近く高い水準です(出所:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」)。
若者が来ない上に、来ても半数近くがいなくなります。
建設業の人手不足はなぜ解消されないのか|構造的な背景と投資テーマ技術・技能継承が失われるリスク
高齢化問題は就業者数だけの話ではありません。60歳以上のベテランが引退するということは、長年現場で培われた技術・技能が同時に失われるということでもあります。
建設現場の施工品質は、マニュアルだけでは伝えきれない経験や判断力に支えられている部分が大きいです。大量引退が起きた後、技術の空白が施工能力の低下として現れるリスクは、数字には表れにくいが無視できない点です。
有価証券報告書の「事業等のリスク」欄に技術者・技能者の確保を明示している建設会社が増えているのも、この問題を認識しているからだと読めます。
投資テーマとして注目できる領域
施工能力の制約と受注への影響
需要が増えても、施工できる人員が足りなければ完成工事高には結びつきません。受注残が積み上がっても施工能力が制約になるケースがあります。
決算で受注高の増加だけを確認するのではなく、施工能力(技術者・技能者の確保状況)を合わせて見ることが有効です。
省人化・自動化への需要
人手が減るほど、1人あたりの生産性を上げる必要が高まります。ICT建機・施工管理DX・測量ドローンなど、省人化・自動化ツールへの需要は、高齢化が進むほど大きくなります。
建設会社は採用では人員を確保できない以上、機械やソフトウェアへの投資で施工能力を維持しようとします。だからツール提供企業にとって、人口構造の悪化は直接的な追い風になります。
インフラ維持管理の単価上昇
補修・維持管理工事の人手が減るほど、工事単価は上がりやすい構造です。件数は高齢インフラの増加とともに積み上がります。一方、施工できる会社の数は減るので、受注する側が強気の価格を設定しやすくなります。高齢化による大量退職が本格化する2030年代に向けて、維持管理工事の採算性は改善方向に向かいます。
まとめ
- 建設業の60歳以上技能者は全体の約26%を占め、10年以内に大量引退が見込まれる。
- 建設投資額は増加(73兆円)しているのに就業者数は減少していて、需要と供給が逆方向に動いている。
- 若者の入職不足と高い離職率(42.5%)が、高齢化を加速させる構造を作っている。
- 大量引退は就業者数の減少だけでなく、技術・技能継承の喪失というリスクもはらんでいる。
- 省人化・DX・インフラ維持管理の単価上昇など、高齢化は複数の投資テーマと連動している。