けんちくま
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「建設DX関連」って言葉で銘柄を探すと、ゼネコンもSaaS企業も建機メーカーも全部出てきてよくわからない。

建設DXという言葉が広がったことで、「建設DX関連株」というくくりで多くの銘柄が語られるようになりました。

しかし、このくくりは実態を捉えていません。ゼネコン・建設SaaS・建機メーカー・測量サービス会社は、建設DXとの関わり方もビジネスモデルも、決算の読み方もまったく違います。

それでは詳しく見ていきましょう。

この記事でわかること
  • 建設DX関連企業を「導入側」と「提供側」に分ける基本の軸
  • 5つの企業層それぞれのビジネスモデルと需要の発生構造
  • 企業層ごとに決算のどの指標を見るべきか
  • 人手不足の深刻化がどの企業層に最も追い風になるか

まず「導入側」と「提供側」に分ける

建設DX関連企業を整理する最初の軸は、「DXを導入する側」か「DXツールを提供する側」かという分け方です。

導入側とは、建設工事を実際に担うゼネコン・サブコン・建設コンサルタントです。DXツールを使って自社の生産性を上げることが目的で、DXは「コストを下げる手段」または「受注能力を広げる条件整備」として機能します。

提供側とは、建設DXに使われるツール・機器・サービスを販売・提供する企業です。建設会社がDXを進めるほど需要が広がる構造で、「建設業の人手不足」が追い風になります。

この2つは、人手不足の影響の受け方がまったく逆です。導入側(ゼネコン)は人手不足で施工能力が制約されるという問題を抱えていて、提供側(SaaS・建機等)はその解決策を売ることで需要が発生します。

同じ「建設DX関連」と呼ばれていても、追い風・向かい風の向きが違います。

5つの企業層の整理

提供側はさらに4種類に分かれます。合計5つの企業層で整理します。

①建設SaaS企業

施工管理アプリ・電子小黒板・遠隔臨場システム・原価管理ツールなど、クラウド上で提供されるソフトウェアサービスです。

月額・年額のサブスクリプション(継続課金)が収益の軸で、一度導入した建設会社が長期間使い続ける「解約率の低さ」が事業の安定性を決めます。

決算で確認すべき指標はARR(年間経常収益)・顧客数・チャーンレート(解約率)の推移です。ARRが増加しながらチャーンレートが低下していれば、顧客基盤が着実に積み上がっているとわかります。

②建機・センサー・測量機器メーカー

ICT建機(マシンガイダンス・マシンコントロール付き重機)・LiDARセンサー・地上型レーザースキャナー・MMSなど、ハードウェアを製造・販売するメーカーです。

収益は「1台いくら」のハード売り切りが基本ですが、ICT化の進展とともにソフトウェア・サービス収益の比率を高める方向に動いています。

建機メーカーは純正ICT建機の販売台数・ICT搭載率の変化が需要の先行指標になります。アフターマーケット市場(後付けシステム)を担う企業では、新規顧客獲得よりも既存建機台数に対する導入率の上昇が収益を動かす要因です。

③測量・点検サービス企業

ドローン測量・三次元レーザー計測・インフラ点検を請け負うサービス企業です。i-Constructionが普及して測量需要が増えることと、インフラ老朽化対応の需要が増えることで、2つの需要が重なる位置にあります。

この2つの需要は異なる発注元(建設工事の元請けゼネコン・公共インフラ管理者)から同時に生まれます。どちらかの需要が落ちても片方でカバーしやすく、収益が1つの発注元に依存しにくい構造です。

この企業層は売上の多くが「工事・業務ごとの請負」型のため、受注件数・受注単価・稼働率が収益を左右します。大手測量会社から参入してきたプレイヤーと、建設DXスタートアップから参入してきたプレイヤーが競合しているセグメントです。

④ゼネコン・サブコン(DXの導入側)

建設DXを「使う側」の企業です。DXツールの導入効果は、技術者1人が管理できる現場数の増加・完成工事高の増加・利益率の改善という形で決算に現れてきます。

ただし、DXツールの初期導入コストは短期的にはコスト増として出るため、短期の利益率悪化と中長期の受注余力拡大を区別して読む必要があります。

有価証券報告書の「人材戦略」「省人化の取組」欄に具体的な進捗が記述されているかどうかが、DX対応の本気度を読む手がかりになります。

⑤インフラ維持管理企業

老朽化したインフラ(橋梁・トンネル・道路・上下水道等)の補修・点検・維持管理を担う企業です。建設DXとの接点は点群データ・ドローン点検・デジタルツインの活用で、点検・補修の効率化が業務の中心になります。

国土交通省の推計によれば、インフラ維持管理費は今後大幅に増加する見通しです(出所:国土交通省「インフラメンテナンスの将来推計」)。

維持管理・点検を担える技術者の絶対数が減る一方で、点検義務・補修需要は増え続けます。需給が逼迫して工事単価が押し上がりやすい構造で、人手不足が進む中での単価上昇が期待できるセグメントです。

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企業層ごとに決算のどこを見るか

5つの企業層は、決算の見方が異なります。以下の表に整理します。

企業層 ビジネスモデルの軸 決算で確認すべき指標
①建設SaaS サブスク継続課金 ARR・顧客数・チャーンレートの推移
②建機・センサー ハード売り切り+サービス化 ICT建機販売台数・ソフト/サービス収益比率
③測量・点検サービス 請負型サービス 受注件数・受注単価・稼働率
④ゼネコン・サブコン 工事請負(施工能力が上限) 受注残・完成工事高・完成工事総利益率の推移
⑤インフラ維持管理 維持管理請負+点検 受注単価の動向・維持管理比率・公共工事受注割合

SaaS企業はARRの積み上がりを見る。建機メーカーはサービス収益化の進捗を見る。ゼネコンは受注高より完成工事高と利益率を見る。企業層が違えば、同じ「売上増加」でも意味がまったく異なります。

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人手不足の深刻化がどの企業層に追い風になるか

建設業の人手不足は今後も構造的に続くと見られています。下図は国土交通省による建設投資・許可業者数・就業者数の長期推移で、就業者数とともに許可業者数も減少が続いていることがわかります。

国土交通省 建設投資、許可業者数及び就業者数の推移
出所:国土交通省「建設投資等の見通し(令和8年度)」p.3 建設投資、許可業者数及び就業者数の推移

この前提に立つと、5つの企業層への影響は以下のようになります。

最も直接的に追い風になるのは「提供側」3層(SaaS・建機・測量)です。人手が減るほど、1人でできる仕事の範囲を広げるツール・機器・サービスへの需要が増えます。

特に建設SaaSは、技術者の配置義務(建設業法第26条)と組み合わさることで、単なる「効率化ツール」から「受注能力を維持するための必需品」に変わっています。

ゼネコン(導入側)は、DXへの対応力の差が企業間の競争力格差として広がる方向に動いています。DXで省人化を進めた企業は施工能力を維持・拡大できる一方、対応が遅れた企業は受注余力が縮み続けます。

インフラ維持管理は、インフラの老朽化が加速するほど需要が増え、人手不足で工事単価が上がりやすい構造です。長期的に最も安定した需要基盤を持つ企業層の一つです。

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注意点
「建設DX関連」という株式テーマでまとめられた銘柄一覧は、上記5つの企業層が混在しています。テーマ買いで一括りに動く場面もありますが、業績の方向性・決算の読み方・リスク要因は企業層ごとに異なります。テーマ全体ではなく、各企業がどの層に属するかを確認してから判断することが重要です。

まとめ

  • 建設DX関連企業は「導入側(ゼネコン)」と「提供側(SaaS・建機・測量・維持管理)」に分かれ、人手不足の影響の受け方が逆方向になる。
  • 建設SaaSはARR・チャーンレート、建機メーカーはサービス収益化の進捗、ゼネコンは完成工事高と利益率など、企業層ごとに決算の見方が異なる。
  • 人手不足の深刻化で最も直接的に追い風になるのは建設SaaS・建機・測量の「提供側」3層で、ゼネコンはDX対応力の差が競争力格差に直結する。
  • インフラ維持管理は老朽化加速と人手不足により工事単価が上がりやすく、長期的に安定した需要基盤を持つ。
  • 「建設DX関連」という一括りのテーマではなく、各企業がどの層に属するかを確認してから業績の方向性を読むことが重要。