けんちくま
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インフラ老朽化ってよく聞くけど、具体的にどの程度深刻なの?建設業への需要はどれくらい続くの?

日本のインフラの多くは高度経済成長期(1960〜70年代)に集中して整備されました。それから50〜60年が経ち、橋・トンネル・水道管が一斉に更新時期を迎えています。

これは景気や政策に関係なく進む物理的な事実です。老朽化したインフラは補修・更新しなければ使えなくなります。だから建設業にとって、インフラ老朽化は長期にわたる構造的な需要の柱になります。

それでは詳しく見ていきましょう。

この記事でわかること
  • 日本のインフラ老朽化がどの程度進んでいるか(数字で確認)
  • 維持管理・更新費がこれからどう増えるか
  • 新築工事と維持管理工事でどの企業群に需要が出るかが違う理由
  • 投資家が老朽化需要を決算でどう確認するか

数字で見る:インフラ老朽化の現状

国土交通省の推計によると、建設後50年以上経過する社会資本の割合は今後急速に高まります。

インフラ種別 2023年時点 2033年時点(推計) 2040年時点(見通し)
道路橋 約43% 約63% 約75%
トンネル 約25% 約42% 約53%
河川管理施設(水門等) 約32% 約57% 約67%
港湾岸壁 約52% 約65% 約68%

出所:国土交通省「社会資本の老朽化の現状と将来」

2040年には道路橋の約4分の3が建設後50年を超えます。同じ時期に建てられたものが一斉に老朽化するので、更新工事が集中します。これは止められない波です。

維持管理・更新費は年間5〜6兆円規模で続く

国土交通省の推計では、インフラの維持管理・更新に必要な年間費用は今後も高水準で続きます。

  • 2023年度:約5.5〜6.0兆円
  • 2028年度:約5.8〜6.4兆円
  • 2038年度:約6.0〜6.6兆円
  • 2048年度:約5.9〜6.5兆円

出所:国土交通省「インフラの老朽化対策について」

景気が悪化しても、インフラは使い続けないといけません。老朽化した橋が崩落すれば人命にかかわります。だから維持管理・更新費は削りにくい。景気に左右されない底堅い需要が、今後数十年にわたって確保されています。

国土強靭化とは何か:建設業の需要を支える国策の仕組み

新築需要と老朽化需要はどう違うか

建設業の需要には、大きく2つの流れがあります。新しいインフラや建物を作る「新設需要」と、既存のインフラを補修・更新する「維持管理・更新需要」です。この2つは、恩恵を受ける企業群が違います。

  新設需要 維持管理・更新需要
景気との連動 連動しやすい 連動しにくい(使い続けるため必要)
工事規模 大型案件が多い 小〜中規模が多い
恩恵を受けやすい企業 大手ゼネコン・土木系大手 中堅ゼネコン・専門補修業者・建設コンサルタント・点検企業
必要な技術 大規模施工管理・ICT建機 点検診断・補修工法の専門技術・ドローン活用

維持管理・更新需要では、まず「何が老朽化しているかを調べる」点検・診断の工程が先に来ます。ここで建設コンサルタント・測量会社・ドローン点検事業者の需要が出ます。次に補修・更新工事が続きます。

ドローン測量の普及は測量会社の構造をどう変えているのか

点検・診断が「入口の需要」になる理由

インフラを補修・更新するには、まず「どこがどの程度劣化しているか」を調べる点検・診断が必要です。

2013年に道路法が改正され、橋梁・トンネルなどの定期点検が義務化されました。5年に1度、近接目視を基本とした点検が義務です。この点検需要だけで、全国に数十万橋の橋梁と1万以上のトンネルが対象になります。

人が入れない高所・狭所の点検にドローン・レーザー計測が活用されています。ドローン測量会社・建設コンサルタントが担うこの点検市場は、老朽化が進むほど需要が増える構造です。景気に関係なく、法律で義務化されているので需要が安定しています。

予防保全への転換が工事量を底上げする

従来は「壊れたら直す(事後保全)」が主流でした。でも国土交通省は「壊れる前に直す(予防保全)」への転換を推進しています。

予防保全の方が長期的にコストを抑えられるからです。国交省の試算では、予防保全に切り替えると30年間の累計費用が事後保全より約3割少なくなります(出所:国土交通省)。ただし、毎年の工事量は増えます。

事後保全では「壊れてから大規模工事」になりますが、予防保全では「定期的に小〜中規模の補修工事」が続きます。一度に大きな工事はなくなりますが、毎年コンスタントに工事が出続けます。これは安定した受注の継続につながります。

決算で老朽化需要を確認するポイント

維持管理・補修工事の売上比率

セグメント開示や決算補足資料に「補修工事」「維持管理工事」の比率が出ている会社では、この比率が増えているかを確認します。新設工事の比率が高い会社より、景気変動への耐性が高い傾向があります。

点検・調査業務の受注動向

建設コンサルタント・測量会社では、「インフラ点検・診断」「維持管理計画策定」の受注が増えているかを確認します。点検受注が増えれば、その後の補修工事の発注につながります。点検受注はインフラ補修市場の先行指標です。

技術者の維持管理領域への配置

有価証券報告書・統合報告書で、維持管理・補修領域への技術者増員や、点検ドローン・センサー技術への投資が記載されている場合、老朽化需要への対応が進んでいると読めます。

注意点
インフラ老朽化による需要は長期で続きますが、人手不足が深刻で工事を担う技術者・技能者が足りません。「老朽化が進んでいる=すぐ大量発注される」とは限りません。点検・補修ができる人材・企業が限られているため、需要があっても消化できないケースも生じています。また、水道・下水道インフラの更新は自治体の財政状況に影響されやすく、人口減少で料金収入が減少している地方では更新が遅れることもあります。

まとめ

  • 高度経済成長期に集中整備されたインフラが一斉に老朽化し、2040年には道路橋の約75%が建設後50年超えとなる見通し(出所:国土交通省)。
  • 維持管理・更新費は年間5〜6兆円規模が今後数十年続く推計で、景気に左右されない底堅い需要になっている。
  • 新設工事は大手ゼネコン向け、維持管理・更新工事は中堅ゼネコン・建設コンサルタント・点検企業向けの需要が出やすい。
  • 点検義務化でドローン点検・建設コンサルタントの需要が安定的に増えていて、点検受注は補修工事の先行指標になる。
  • 予防保全への転換で大型工事は減るが毎年の工事量は増加。維持管理比率が高い会社ほど景気変動への耐性が上がる。