けんちくま
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測量DXって、ドローンで測量が速くなるってことでしょ?測量会社には良い話じゃないの?

ドローン測量は測量会社にとって「便利な道具が増えた」だけではありません。1人あたりの測量能力が飛躍的に上がることで、人手に依存していたビジネスモデルの前提そのものが崩れています。

生産性が上がる会社と、対応が遅れる会社の格差が拡大し、業界再編が加速しています。

それでは詳しく見ていきましょう。

この記事でわかること
  • 従来の測量会社のビジネスモデルと、ドローン普及で何が変わったか
  • なぜ大手と中小の格差が拡大し、M&A再編が進んでいるのか
  • 建設DX需要とインフラ点検需要の二重構造
  • 測量サービス会社の決算で何を確認するか

従来の測量会社のビジネスモデル

測量は長らく「人が現地に行き、時間をかけて計測する」仕事でした。測量士・測量士補の資格を持つ技術者が現場に行き、トータルステーション(光波測距儀)やGPS機器を使って1地点ずつ計測します。精度は高いですが、広い範囲を測るには多くの人員と時間が必要でした。

  • 人数=こなせる仕事量:受注を増やすには測量士を増やすしかない
  • コストの大部分は人件費:設備より人が業績を左右する労働集約型
  • 人手不足 → 受注上限が下がる:建設投資が増えても人が足りなければ仕事が取れない

ドローン測量が1人あたりの生産性を変えた

ドローン測量(UAV写真測量・UAV-LiDAR)の普及で、この比例関係が崩れました。ドローンを使えば、1人のオペレーターが従来の数倍〜数十倍の面積を短時間で計測できます。

従来は数週間かかっていた広範囲の地形測量が、ドローン測量では数時間〜数日で完了します(出所:各社事例)。コストと時間の削減幅は、工事規模が大きいほど顕著です。

ドローン測量の生産性向上は、従来型の測量会社に対して2つの圧力を同時にかけます。

  • 価格競争の激化:同じ仕事をより少ない人手でこなせるようになるため、単価の下落圧力が生まれる
  • 新規参入の増加:大型設備投資なしにドローンと処理ソフトで測量サービスに参入できるため、建設DX系企業・IT系企業からの参入が進む

測量の仕事は「何を測るか」だけでなく、「どのデータをどう活用するか」が競争軸になっています。

点群データとは:ICT施工・BIM・インフラ点検をつなぐ3次元計測の仕組み

なぜ大手が中小測量会社を買収するのか

ドローン測量への対応力は企業規模によって大きく差があります。この対比を整理すると以下のようになります。

  大手測量会社 地方中小測量会社
技術・設備 ドローン・LiDAR・クラウドGIS導入済み 導入が遅れているケースが多い
地域ネットワーク 弱い(地域密着は薄い) 地元の公共工事発注ルートを持つ
設備投資余力 あり 乏しい
後継者・廃業 比較的安定 後継者不足で廃業・売却が増加

ただ、大手がこうした中小を「買いに行っている」のには理由があります。大手が持つドローン・データ処理のノウハウは、地域ごとの発注者との関係がないと活かせません。中小測量会社は地元の公共工事の仕事を持っているが、技術投資の余力がない。買収すれば、技術力と地域ネットワークが一気に揃います。

しかも、買収するたびに同じ設備・技術で対応できる地域と仕事が増えるので、規模が大きくなるほど1件あたりのコストが下がる構造です。だから大手は積極的に買収を続けます(出所:各社プレスリリース)。

では、投資家として注目できる企業はどこか。大まかに2種類あります。

企業タイプ ビジネスの構造 注目できる理由
大手測量コンサル・
空間情報サービス会社
M&Aで地方を傘下に収め、技術×地域ネットワークを拡大 買収するたびに同じ設備でカバー地域が増え、1件あたりコストが下がる。規模が大きいほど有利になる構造
点群データ処理・
建設DX企業
ドローン測量の点群データを処理・管理・BIM連携するソフト・クラウドを提供 どの測量会社が仕事を取るかに関係なく需要が集まる。測量会社の競争が激しくなるほどむしろ安定

銘柄レベルの整理はnoteで行っています。

需要が二重構造になっている

測量サービス会社の需要には、現在2つの流れがあります。

①建設DX需要(ICT施工の前工程)

i-Constructionの普及で、公共工事では3次元測量がICT施工の第1ステップとして義務化・標準化されています。工事前の地形を点群データで計測することが、ICT建機によるマシンコントロール・出来形管理の基盤になります。

国が公共工事でICT化を推進している限り、この需要は政策に裏打ちされた継続性があります。

下図は国土交通省の直轄工事を対象とした生産性指標です。ICT活用工事が広がるにつれて2015年度比の生産性が改善していて、ドローン測量を含むICT施工の需要が政策的に続いていることがわかります。

国土交通省 i-Construction 2.0(令和6年4月)建設分野における生産性指標
出所:国土交通省「i-Construction 2.0 〜建設現場のオートメーション化に向けて〜」(令和6年4月)p.10 建設分野における生産性指標(直轄ICT工事を対象)
i-Constructionとは:建設現場のICT化を国が後押しする仕組み

②インフラ点検需要(老朽化対応)

橋梁・トンネル・法面・ダムなど、高度経済成長期に整備されたインフラの老朽化が加速しています。定期点検の義務が広がるなか、人が入れない高所・狭所の点検にドローンとレーザー計測の需要が急増しています。

建設DX需要は景気に連動しますが、インフラ老朽化は長期で続く需要です。測量サービス会社にとってもう一つの安定した収益源になっています。

下図は国土交通省の資料による、建設後50年以上経過する社会資本の割合です。道路橋・トンネル・河川管理施設などが2040年にかけて急速に老朽化することが確認できます。

国土交通省 i-Construction 2.0(令和6年4月)建設後50年以上経過する社会資本の割合
出所:国土交通省「i-Construction 2.0 〜建設現場のオートメーション化に向けて〜」(令和6年4月)p.5 建設後50年以上経過する社会資本の割合

この2つの需要を持つことで、測量会社は「建設投資が減っても、インフラ点検需要は着実に増える」構造にあります。

投資家が決算で確認すべき論点

確認ポイント どこを見るか 何がわかるか
ドローン対応の進捗 有価証券報告書のDX投資欄
技術者1人あたり売上高
生産性が改善しているほどドローン活用が進んでいる
需要の構成比 セグメント開示
(建設向け vs 維持管理・点検向け)
インフラ点検比率が高まるほど景気変動の影響を受けにくい
M&A統合の効果 のれんの規模
統合後の受注効率・利益率の推移
M&A直後の利益率低下が一時的か構造的かを判断できる
注意点
測量会社は「建設DX関連」というテーマで語られる一方、建設投資の動向とインフラ点検の動向という異なる2つの景気変動要因を持っています。また、ドローン測量への対応力の差が大きく、同じ「測量会社」でも業績の方向性が異なります。一括りにせず、各社の事業構成と対応状況を確認することが重要です。

まとめ

  • 従来の測量会社は人手集約型ビジネスだったが、ドローン測量の普及で1人あたりの生産性が飛躍的に上がり、ビジネスモデルの前提が変わっている。
  • 競争軸が「何を測るか」から「データをどう活用するか」へ移行し、大手と中小の格差が拡大。地方中小測量会社のM&A再編が進んでいる。
  • 需要はi-Constructionによる建設DX需要とインフラ老朽化によるインフラ点検需要の二重構造になっていて、長期的に安定しやすい。
  • 決算では技術者1人あたりの売上高・建設DX比率とインフラ点検比率の変化・M&A統合の効果が確認ポイントになる。
  • 「測量DX関連」を一括りにせず、ドローン対応の進捗・事業構成・M&A戦略を会社ごとに確認することが判断精度を上げる。