けんちくま
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「国土強靭化で建設株が恩恵を受ける」ってよく聞くけど、実際どのくらいの規模で、いつまで続くの?

国土強靭化は、建設業の公共工事需要を支える最も大きな国策のひとつです。防災・減災・インフラ維持管理を目的に、複数年度にわたる予算が確保されています。

「国策テーマ」という言葉で片付けてしまいがちですが、予算の規模・期間・対象工事を知ると、どの会社にどのくらいの恩恵が出るかを読む精度が上がります。

それでは詳しく見ていきましょう。

この記事でわかること
  • 国土強靭化とは何か、何のための政策か
  • 5か年加速化対策(15.6兆円)と次期計画(20兆円強)の流れ
  • どの種類の工事・企業に需要が出るか
  • 「国策テーマ終了」のリスクと、需要が続く構造的な理由

国土強靭化とは何をする政策か

国土強靭化とは、大規模な災害が起きても「致命的な被害を受けない国土・社会をつくる」ための政策です。2013年に「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靭化基本法」が施行されました。

具体的には、道路・橋梁・河川堤防・ダム・港湾・上下水道・電力インフラなど、社会の基盤となるインフラを強化・更新します。地震・豪雨・台風・津波などの災害時に、インフラが壊れて社会機能が停止する事態を防ぐのが目的です。

インフラ整備を担うのは建設会社・建設コンサルタントです。だから国土強靭化の予算は、そのまま建設業の公共工事需要につながります。

5か年加速化対策から次期計画へ:予算の流れ

国土強靭化の政策には複数の計画が続いています。投資家として把握しておくべき流れを整理します。

計画名 期間 事業規模
防災・減災、国土強靭化のための
5か年加速化対策
2021〜2025年度(5年間) 約15.6兆円(出所:内閣官房)
第1次国土強靭化実施中期計画 2026〜2030年度(5年間) おおむね20兆円強(出所:内閣府)

5か年加速化対策は2025年度で終了しますが、次の計画がすでに決まっています。しかも規模は5兆円以上大きくなっています。「5か年対策が終わって建設需要が落ちる」とはならない構造です。

国土強靭化基本法の改正(2022年)により、この政策は単年度ではなく中長期的・継続的に進める制度的な枠組みになっています。政策が「終わる」のではなく、計画が更新されながら続きます。

どの工事・どの企業に需要が出るか

国土強靭化の対象となる工事は広範囲にわたります。大まかに3つに分けると、以下のようになります。

  • インフラ維持・更新:道路橋梁・トンネル・河川堤防・ダム・港湾・上下水道の補修・更新。老朽化したインフラを順次更新していく長期需要。
  • 防災・減災インフラの整備:砂防ダム・急傾斜地の崩落防止・海岸堤防・避難路の整備など。毎年の豪雨・地震での被害実態をもとに整備が続く。
  • 電力・通信インフラの強靭化:停電・通信途絶を防ぐためのインフラ二重化・地中化。電気工事を中心とする設備系サブコンの需要にもつながる。

これらの工事は土木工事が中心です。だから、土木比率が高いゼネコン・建設コンサルタント・土木系サブコンが恩恵を受けやすい構造です。都市部の大型建築工事を中心とするゼネコンには、直接の恩恵は限定的です。

なぜ「国策が終わっても需要は続く」のか

投資家がよく疑問に思うのは、「5か年対策が終わったら建設需要が落ちるのか」という点です。続く理由は2つあります。

①インフラ老朽化は景気と関係なく進む

日本のインフラの多くは高度経済成長期(1960〜70年代)に集中して整備されました。橋梁・トンネル・水道管・下水道などが一斉に更新時期を迎えています。

国土交通省の推計では、建設後50年以上経過する社会資本の割合が2040年に向けて急増します。これは政策の有無にかかわらず、更新しなければ使えなくなるインフラが増え続けることを意味します。需要は政策予算の有無に関係なく、構造的に存在します。

②計画が更新され続ける制度設計になっている

国土強靭化基本法の改正により、政府は中長期にわたって計画を作り・更新し続ける義務を負っています。5か年計画が終わっても、次の5か年計画が始まります。2026〜2030年の計画が示すように、予算規模はむしろ増えています。

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投資家が決算で確認できること

公共土木の受注比率の変化

国土強靭化の恩恵を受けているかどうかは、公共土木の受注比率の推移で確認できます。セグメント開示・発注者別受注高に「官公庁向け土木」の比率が出ている会社では、その推移を見ます。国土強靭化予算が増えれば、土木比率が高い会社の公共受注が増えるはずです。

受注残の工事種別

決算補足資料に「工事種別受注残」が出ている場合、土木工事の受注残が積み上がっているかを確認します。国土強靭化関連の大型プロジェクト(砂防工事・河川整備・橋梁更新など)を受注している会社は、数年にわたって安定した売上が続きます。

建設コンサルタントの調査・設計受注

工事の前には必ず調査・設計が入ります。建設コンサルタントが国土強靭化関連の調査・設計を受注しているかは、その後のゼネコン受注の先行指標になります。建設コンサルタントの受注残が増えている局面は、数年後の工事需要が確認できている状態です。

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注意点
国土強靭化の予算は増えていますが、人手不足によって工事を実行できる能力(施工能力)に限界があります。予算があっても技術者・技能者が足りなければ工事は進みません。「予算が増えた=受注・業績が比例して増える」とは言い切れません。また、政権交代・財政制約・優先順位の変更によって特定の工事種別の予算が削られる可能性もあります。国土強靭化全体の方向性は継続的ですが、会社ごとの得意工種がその方向性と一致しているかを確認することが重要です。

まとめ

  • 国土強靭化は防災・減災・インフラ強化のための国策で、建設業の公共工事需要を支える最大の柱のひとつ。
  • 5か年加速化対策(2021〜2025年・15.6兆円)が終わっても、次期計画(2026〜2030年・20兆円強)に引き継がれる。予算規模はむしろ拡大。
  • インフラ老朽化は政策の有無にかかわらず進む構造的な需要で、国土強靭化予算が終わっても更新工事の需要は続く。
  • 恩恵を受けやすいのは土木比率が高いゼネコン・建設コンサルタント・土木系サブコン。
  • 決算では公共土木受注比率の変化、土木工事の受注残、建設コンサルタントの設計受注を確認する。